求人は足りていません。それでも若い人は県外へ出ていきます。数字を並べると、その理由が見えてきます。
まず、求人の数から。
令和8年6月の高知県の有効求人倍率は1.16倍でした。仕事を探している人1人に対して、求人が1.16件ある状態です。
実数で見ると、求人が14,896人ぶん、仕事を探している人が12,845人。2,000人ぶんほど求人が余っています。
新しく出た求人だけを見る新規求人倍率は1.94倍。こちらはさらに高く、企業が人を求めている状況がうかがえます。新規求人数は前年同月から740人(17.2%)増えました。
増えているのは、宿泊業・飲食サービス業(前年同月比82.3%増)、医療・福祉(29.1%増)、サービス業(21.3%増)などです。
つまり「高知には仕事がない」という話は、求人の数で見るかぎり当たっていません。むしろ人手が足りていない状態です。
同じ資料の、別の数字です。
求人倍率が1.16倍あっても、正社員に限れば0.92倍。この差が、求人の数だけでは見えない部分です。
求人は増えているものの、その中身にはパートやアルバイト、有期雇用が含まれます。安定した働き方を求める人にとっては、選択肢がまだ十分ではないということになります。
もっとも、正社員の倍率は5か月連続で上がっています。人手不足が続くなかで、企業が正社員として採用する動きは強まっているようです。
働いて得られる金額です。
令和5年度の高知県の1人当たり県民所得は2,749千円でした。前年度から2.7%増えています。
ただし全国と比べると78.1%の水準です。全国平均を100とすると、高知は78ということになります。
県内総生産は名目で2兆4,535億円。前年度から名目で2.5%、実質で0.2%の成長でした。
ここで、前のセクションの数字と並べてみます。求人はある。ただし正社員は1倍を切り、所得は全国の8割弱。「仕事があるかどうか」と「どんな条件で働けるか」は、別の問題として現れています。
県内総生産の産業別の構成です。
| 産業 | 県内総生産 | 構成比 |
|---|---|---|
| 第3次産業(サービス業ほか) | 1兆8,436億円 | 77.6% |
| 第2次産業(製造業・建設業ほか) | 4,343億円 | 18.3% |
| 第1次産業(農林水産業) | 715億円 | 3.0% |
高知は農業・漁業のイメージが強いかもしれませんが、金額で見ると第1次産業は3.0%です。県内総生産の8割近くを第3次産業が占めています。
これは高知に限った話ではなく、全国的な傾向でもあります。ただ、第2次産業(製造業など)の比率が低めであることは、働く場所の選択肢に影響します。
求人が増えている業種として労働局が挙げているのも、宿泊・飲食サービス業、医療・福祉、サービス業でした。第3次産業に仕事が集中しているという構造は、求人の側からも確認できます。
なお第1次産業は、金額の割合は小さくても、地域の暮らしや景観、移住の受け皿という面では別の重みを持ちます。県議会でも農業の担い手不足はくりかえし議論されています(農業の議論まとめ)。
ここまでの数字を、人口の話と重ねます。
高知県から県外へ転出する人のうち、15歳以上34歳以下が74%を占めます。理由の第1位は新卒就職で40%、次いで学業22%、転職18%です。
そして人口の減り方を月ごとに見ると、3月だけで2,840人が減ります。ほかの月がおおむね600〜700人ですから、進学・就職の季節に集中していることがはっきり出ています(高知県の人口)。
求人倍率は1.16倍。数のうえでは仕事があります。それでも新卒で県外へ出る人が多い——この二つを並べると、問題は「仕事の数」ではなく「どんな仕事があるか」の側にある可能性が見えてきます。
正社員の求人倍率0.92倍、所得が全国の78.1%という数字は、その仮説と矛盾しません。ただし、これだけで結論づけることはできません。希望する職種があるか、キャリアの見通しが立つか、都市で暮らしたいかどうか——転出の判断には、統計に表れない要素も多く含まれます。
県議会では、若者の所得向上や県内企業への就職支援がくりかえし取り上げられています。実際のやり取りは議論ダイジェストで会議録の原文とあわせて読めます。
国と県の公表資料です。
有効求人倍率はハローワークで扱った求人・求職に基づく数字です。ハローワークを通さない求人・転職は含まれません。季節調整値は季節による変動をならした値、原数値はそのままの値です。
県民経済計算は年度単位で、公表までに時間がかかります。産業別の構成比は令和3年度、1人当たり県民所得は令和5年度と、年度が異なる点にご注意ください。